委託販売作家のご紹介

大町山麓美術館では、陶芸、写真・映像、ガラスの4作家の作品を委託販売しています。美術館で出会った表現を、ご自身の暮らしでもお楽しみください。

篠田明子|会染窯

篠田明子は、長野県池田町の会染窯を拠点とする陶芸家です。昭和37年(1962)、松本市に陶芸家・篠田義一の長女として生まれました。母方の祖父は、染付の分野で人間国宝に認定された近藤悠三です。陶芸に親しむ環境に育ちながら、受け継いだ技術を自らの表現へと育て、身近な草花を描いた器などを制作しています。

陶芸の道を志すきっかけとなったのは、高校時代に見た父の作陶三十周年記念展でした。自分の仕事が形として残ることにひかれ、高校卒業後、父に師事します。土練りやろくろの扱いを基礎から学び、絵付けでは、同じ形の器でもそれぞれ異なる図案を考えるよう教えられました。一つの器を作ることが、次の表現を探す学びにもなっていたのです。

昭和61年(1986)には長野県工芸秀作展に初入選し、翌年にはオブジェ作品「連山」で朝日陶芸展新人陶芸賞を受賞しました。草花を描いた器だけでなく、立体の形そのものを考える作品にも取り組んできたことは、明子の制作を知るうえで大切な一面です。

平成8年(1996)、池田町会染に自らの窯を築きました。北アルプスを望む土地で、季節の移ろいや身近な植物に目を向けながら制作を重ねています。白い器に描かれた花や葉を見るときは、植物の名前だけでなく、茎の伸び方、葉の向き、絵のない余白にもご注目ください。器の丸みに沿って絵付けを追うことで、平面の絵とは異なる楽しみが生まれます。

当館では、苺や桜などを題材とした花入、蛍袋の水滴、フリーカップなどの作品をご紹介しています。花入は花を生けた姿を思い浮かべながら、水滴は小さな器に込められた造形を楽しみながらご覧いただけます。日々使うカップも、色や形を自分の好みで選ぶことで、いつものひとときを少し特別なものにしてくれるでしょう。

大町山麓美術館では、父・篠田義一の作品にも触れていただけます。父から娘へ、どのような表現が受け継がれ、どこにそれぞれの個性があるのか。展示作品を鑑賞した後に明子の器を見ることで、技術の継承を、今も続く作り手の仕事として感じていただければ幸いです。

飾って眺める楽しみと、暮らしの中で使う楽しみ。その両方を思い浮かべながら、一つひとつの器と向き合ってみてください。会染窯の作品を通して、安曇野の陶芸を身近に感じるきっかけをお届けします。

会染窯 公式ホームページ
https://www.aisomegama.com/

宮澤弘幸|相道寺焼

宮澤弘幸は、長野県池田町で相道寺焼の新窯の仕事を受け継ぐ陶芸家です。地域に残る焼き物の歴史を背景に、父・宮澤菊男から続く制作の場を担ってきました。古い器をそのまま再現することだけではなく、学んだ技術を生かして新たな作品を作ること。その営みを通して、相道寺焼を現在の暮らしへとつないでいます。

相道寺焼には、江戸時代の古窯と、昭和に再興された新窯の歩みがあります。古窯が閉じられた後、制作は一度途絶えましたが、昭和43年(1968)の発掘調査などを経て、地域の人々の間で焼き物を再び育てようとする動きが生まれました。そして昭和47年(1972)、篠田義一の指導を受け、新窯が開かれます。新窯は作品を作る場所であるとともに、人々が陶芸を学ぶ場にもなりました。

その新窯の仕事を育てた一人が、弘幸の父・菊男です。弘幸は多治見で陶芸を学び、若尾昌宏の虎渓窯で修業した後、地元で制作に取り組みました。相道寺で育った経験に、美濃で身につけた技術が重なっています。地域の伝統は、その土地の中だけで完結するものではなく、外で学び、持ち帰る経験によっても豊かになっていくのです。

相道寺焼をご覧になるときは、まず器全体の姿に目を向けてみてください。胴のふくらみ、口の開き方、立ち上がる線など、輪郭を追うだけでも器の印象は変わります。次に、表面の色や釉薬の表情を見ていくと、形との組み合わせが感じられます。大きな作品と小さな器を見比べることも、陶芸を楽しむ入口になります。

弘幸は制作に加え、陶芸教室などを通して土に触れる楽しさを伝えてきました。自分の手で形を作り、焼き上がった器を見る経験は、普段使っている焼き物を見直す機会にもなります。作品を生み出す仕事と、ものづくりに親しむ人を育てる仕事。その両方が、地域の陶芸を支えてきました。

大町山麓美術館では、相道寺焼の歴史に触れる展示とともに、弘幸の作品を委託販売しています。古窯の器を鑑賞することと、現在の作り手の作品を暮らしに迎えることは、異なる時代の焼き物に出会う二つの楽しみです。古い器に刻まれた時間と、新しい器に見られる作り手の工夫。その双方に触れながら、相道寺焼を身近に感じていただけます。

器を選ぶ際は、使いたい場面や飾りたい場所も思い浮かべてみてください。旅先で出会った一品が、帰宅後も池田や大町の風景を思い出すきっかけになるかもしれません。相道寺焼という名前の向こうにある土地の歴史と、今を生きる作り手の仕事を、作品を通して感じていただければ幸いです。

相道寺焼 公式ブログ
https://aidoujiyaki.blogspot.com/

志水哲也|志水哲也写真事務所

志水哲也は、山を歩く経験を土台に、日本の山岳と渓谷を撮影してきた写真家・山岳ガイドです。昭和40年(1965)、神奈川県横浜市に生まれ、高校時代から登山に親しみました。国内外での単独登攀や長期縦走を重ね、とりわけ黒部峡谷では全支流を踏査するなど、山の奥深くへ足を運んできました。

平成8年(1996)に山案内事務所を開業し、翌年、黒部峡谷の玄関口にあたる富山県宇奈月町へ移り住みます。その後、写真表現に本格的に取り組み、平成14年(2002)には志水哲也写真事務所を開設しました。山岳ガイドとしての経験と、写真家として風景を見つめる時間が、制作の中で結びついています。

作品を鑑賞するときに心に留めたいのは、撮影された一瞬の前後にも、長い時間があるということです。撮影場所まで歩く時間、天候の変化を待つ時間、同じ土地を再び訪ねる時間。写真に写っていない道のりを想像すると、目の前の山や流れが、遠くから眺める景色とは違って感じられるのではないでしょうか。

写真集には『黒部』『日本の幻の滝』『水の屋久島』『森の白神』『剱』などがあります。黒部峡谷を中心としながら、屋久島や白神山地などにも撮影の場を広げてきました。山の輪郭だけでなく、谷を刻む水、森の広がり、土地ごとの自然に目を向けることで、それぞれの場所を見つめる写真家の視線に触れられます。

平成30年(2018)からは、4K映像による記録にも本格的に取り組んでいます。写真が一瞬をとどめる表現であるのに対し、映像では変化していく時間そのものを見ることができます。一枚の写真をじっくり眺めることと、映像の流れに身を置くこと。二つの表現を通して山岳自然に親しめる点も、志水の仕事の魅力です。

大町山麓美術館では、志水の映像作品DVDをご案内しています。当館で山岳絵画を鑑賞した後、写真や映像という別の表現から山に向き合うことで、風景を見る楽しみをさらに広げていただければと考えています。同じ山を題材にしていても、描く人と撮る人では、選び取る場面も表現の方法も異なります。その違いを味わうことも、美術館での出会いの一つです。

作品を楽しむために、登山経験や山の名前に詳しい必要はありません。まずは気になる場面を見つけ、その場所の空気や広がりを想像してみてください。北アルプス山麓で過ごした時間を、帰宅後の鑑賞へとつなぐ一作品として、長く自然に向き合ってきた志水哲也の世界をご紹介します。

志水哲也 公式ホームページ
https://shimitetsu.main.jp/

丸山理恵子|玻璃猫

丸山理恵子は、長野県大町市の「玻璃猫」でガラスの作品を手がける作家です。大町山麓美術館では、陶芸や写真・映像と並び、ガラスという素材に親しんでいただくため、丸山の作品をご紹介しています。山麓の旅の途中で、地域の作り手の仕事に出会い、暮らしへ迎える。そのきっかけとなる作品をお届けします。

当館でご紹介する作品には「光の奏で」や角皿などがあります。作品名を手がかりに眺めることと、名前にとらわれず自分の目で感じること。その両方を行き来しながら、ガラスの表情をお楽しみください。最初に気になった色や形から見始め、少しずつ細部へ視線を移していくと、一つの作品の中にもさまざまな見どころが見つかります。

ガラス作品を鑑賞するときには、形や模様だけでなく、光との関わりにも目を向けてみてください。表面に映る光、向こう側の景色、見る位置による印象の違いなど、周囲の環境も鑑賞の手がかりになります。正面から見た後に少し視線を動かし、輪郭や奥行きを確かめてみるのも一つの楽しみ方です。

角皿をご覧になるときは、四角い形の中で、色や文様がどのように配置されているかにご注目ください。中央だけでなく、縁や隅へと目を向けることで、器全体の構成が見えてきます。器としての使い道を思い浮かべるほか、一つの工芸作品として眺めることで、日用品を見る目も少し変わるかもしれません。

陶芸とガラスを続けて見ると、同じ器であっても素材によって印象が異なることに気づかされます。絵画を見た後にガラスの色や形を見ることも、表現を比べる楽しみにつながります。当館では、分野ごとに作品を切り離すだけでなく、一つの鑑賞体験の中で、さまざまな素材と表現に触れていただきたいと考えています。

作品を選ぶときには、ご自宅のどこで楽しみたいかを想像してみてください。いつも目に入る場所に飾るのか、器として使うのか、大切な方への贈り物にするのか。暮らしの場面を思い浮かべると、自分に合う一品を探す時間も豊かになります。用途や取り扱いについては、作品ごとにスタッフへお尋ねください。

旅先で見つけた作品は、買い求めたときの風景や会話とともに記憶に残るものです。大町で出会ったガラスが、帰宅後の日々にも小さな鑑賞の時間を生んでくれれば幸いです。丸山理恵子の「玻璃猫」を通して、作品を美術館で見るだけでなく、身近な場所で楽しむ喜びをご紹介します。

玻璃猫 Instagram
https://www.instagram.com/sasara_hosara/

※お取り扱い作品・価格・在庫状況は、館内でご確認ください。